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危険木D-6~100万本の景観の犠牲~
2023.05.28

危険木D-6~100万本の景観の犠牲~

今回の目撃者fは、

2019年7月、佐賀県唐津市にある国の特別名勝・虹の松原で、折れた松の木と県道を走行中の車が衝突しました。

この事故で、母親の運転する車の助手席に乗っていた当時小学5年の川﨑辿皇くんの胸に木の枝が突き刺さり、辿皇くんは死亡。
危険木D-6~100万本の景観の犠牲~
この松の木をめぐり、行政は事故の6年半前に、「将来重大な事故が発生する恐れがある」と判断していたことが明らかになりました。

危険が放置され、奪われた命。虹の松原の県道沿には今も「安全管理上、撤去が望ましい」とされる木が、180本以上残されています。

危ないと分かっているのに、なぜ伐採しないのか―その背景には、「国」「佐賀県」「唐津市」で複雑に絡み合う管理体制がありました。

危険木D-6~100万本の景観の犠牲~

辿皇くんの母親・明日香さんは、2022年2月、国・佐賀県・唐津市を相手取り、損賠賠償を求める訴えを起こしました。

国有林である虹の松原の所有は、国。松原を通る県道や道路に危険が及ぶ場所の安全管理は佐賀県。唐津市は、国に権限を委譲される形で危険な木を伐採する許可を行っています。
危険木D-6~100万本の景観の犠牲~
辿皇くんが死亡した事故が起きる6年半前のこと。佐賀県によると、県道沿いの松の木・26本の伐採を許可するよう、唐津市に申請しました。

その中には、辿皇くんを死に至らしめた木「D-6」も。しかし当時、木の伐採は許可されず、危険はそのまま放置されました。
危険木D-6~100万本の景観の犠牲~
なぜなのか―裁判の中で県が提出した記録には、県の担当者が市に対して伐採が許可されなかった理由を尋ねた際、市の担当者は「以前に行った大規模な伐採から時間が経っていない」とし、「特別名勝に指定されているため、景観も重要」という考えを示していました。

一方、唐津市は、県の担当者が伐採の申請書類を持って来たことは認めつつ、話し合いの末に県は書類を持ち帰ったため、伐採の許可申請は行われていないと主張。

国は、伐採許可には携わっていないという見解です。「もっと真剣に向き合ってほしい」目の前で息子を失った明日香さんの目には、行政どうしが責任のなすりつけ合いをしているようにしか思えません。
危険木D-6~100万本の景観の犠牲~
辿皇くんの事故から4年が経とうする今でも、虹の松原の県道沿いには、倒木などの危険度が最も高いEランクと判断された木が180本以上残っています。

私たちが現地確認を依頼した樹木医は「伐採したほうがいい木が多くある。このまま放置すべきではない。一番大事なのは人の命を守ること」と言い切りました。

こうした現状について、唐津市長に直接質問すると、「世界一の松原を、市民と一緒に守ってきた自負がある。その保護とともに、安全性に対する責務を果たしていかなければならない」という答えが返ってきました。

かつて潮風から田畑を守るために植えられたという松の木が、今、人々を脅かす存在であるとしたら―。

このままではまた、100万本の景観のための犠牲が繰り返されてしまうのではないでしょうか。
危険木D-6~100万本の景観の犠牲~


目撃者f
2023年5月28日(日)深夜1時30分

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