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2022.07.31

ふるさと消滅―九州北部豪雨5年―

今回の目撃者fは、

5年前の九州北部豪雨で甚大な被害を受けた朝倉市杷木松末。災害後、“小河内集落”では、砂防ダムの建設が始まり住民たちの戻る場所が失われました。

住民たちは自ら地区の解散を決意し、ことし3月、“集落”は姿を消しました。

大規模な自然災害は人々の暮らしやふるさとをも奪います。全国各地で災害が頻発する今、それはひと事ではありません。

災害から命を守るだけではなく、災害から住む場所も守らなければならない―自然の脅威ともに生きる社会は、いま新たな局面を迎えています。

ふるさと消滅―九州北部豪雨5年―

2017年7月の九州北部豪雨で朝倉市杷木松末は壊滅的な被害を受けました。19人の命が奪われ、1人の行方がまだ分かっていません。

地区のほとんどの家が流された“小河内集落”。ここで生まれ育った小川信博さんは、奇跡的に家が残りましたが、長期の避難生活を余儀なくされました。

それでも、小川さんは時間があれば何度も小河内に足を運び、ふるさとの復旧の行方を見守ってきました。

しかし小川さんが見つめる先には、ふるさとが変わり果てた姿。「頑張らんといけん」暗い気持ちを鼓舞させたのは、豪雨から生き延びた小河内の桜の木でした。

およそ20年前に地域の仲間と一緒に植えたものです。枯れてしまうのではと心配していましたが、豪雨の翌年、見事に花を咲かせました。

その桜の木の佇まいに、小川さんは“小河内の復興”を重ね、ふるさとへの思いを強くします。

その小河内地区は、災害直後から「長期避難世帯」に認定されました。新たな砂防ダムの建設も始まり、小河内に戻る予定だった人たちも、元の場所には住めなくなりました。

20年に「長期避難世帯」は解除されましたが、小河内に戻ってきたのは1世帯だけ。「来年3月で小河内地区を解散します」豪雨から4年が過ぎた去年11月、地区の住民が集まった会で解散が決定します。

そして―ことし3月、静かに小河内集落が姿を消しました。

豪雨災害が相次ぐ中、北九州市は都市計画を見直し、災害リスクの高い場所の住民を減らしていく取り組みに乗り出してました。

一部の斜面住宅地の再開発や新たな居住を制限するものですが、市民からの反発が相次ぎ、計画は道半ばとなっています。

全国各地で頻発する大規模な災害。その自然の脅威から、住む場所が制限されかねない社会が目の前に迫っています。

『災害から命を守る』から『災害から命と住む場所を守る』、激甚化する災害とともに生きていく現代社会は、新たな局面を迎えています。


目撃者f
2022年7月31日(日)深夜1時25分

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