金色のアスリート

放送内容

2020.2.29 OA

岡田奎樹・外薗潤平 セーリング

風の力だけで大海原を進むセーリング。
真っ白な帆を巧みに操るスポーツだ。
東京オリンピックメダル期待の2人。

岡田「目標は世界で一番になること」
外薗「1+1が3でも4でも5でも6でもなれるようなチームに」
潮田「神奈川県江の島です。前回の東京オリンピックの聖火台。セーリング競技はこの夏またしてもここが戦いの舞台になります」

セーリング競技470級
岡田奎樹(おかだけいじゅ)(24)
外薗潤平(ほかぞのじゅんぺい)(28)

去年8月の大会で、福岡・鹿児島出身の九州ペアがオリンピックへの切符をつかんだ。

潮田「こちらにあるのが、実際にレースで使うヨットですか?」
岡田「そうです。レースで使うヨットです。全長が4メートル70センチあるので」

海上の見えないラインから一斉にスタートするヨット。
レースは「マーク」と呼ばれるブイを目印に、決められた順序にまわる。
オリンピックでは5日かけて10レース戦いさらに上位10艇(てい)は決勝レースへ。

セーリングは、まさに自然との戦い。
時には船がみえなくなるほどの波に、もまれることも。

ヨットは、向かい風に対してまっすぐに進めないが帆に風を受けると、斜め45度まで、進むことができる。
ジグザグに走りながら風上(かざかみ)へと向っていく。
船の向きを変える度に、選手自らも素早くポジションを変える。
ダイナミックな動きだ。

潮田さんも実際に乗ってみた。

外薗「30キロ弱くらい」
潮田「30キロもでるんですか?そもそもエンジンがないんですもんね。風だけで。」


潮田「岡田選手の役割は具体的に教えてもらっていいですか?」
岡田「海を見て風がありそうなところを見るんですけどオレンジ色のぼん天のところ、ちょっとうねうねしていますね。ああいうところに風があるので」
潮田「海面みながらどこに風が吹いているのかみるんですね」

船の後方に座る岡田はスキッパーとよばれる「舵取り」役。
車の運転の「ハンドル」操作のように舵を切りながら風を求めて進む。

(潮田乗り込む)
岡田「今(帆が)乱れだした。すこしだけ(舵を)引く」
潮田「あ~どうしよう」「こう?」「お~」「軽いですね」
岡田「軽いです。軽いです。」
潮田「本当にちょっとした微妙な力加減で。船も見なきゃいけないし、遠くも見なきゃいけない。他の船も見なきゃいけないし。」

船の前側に乗る外薗は、「クルー」とよばれる乗組員。
身を乗り出して、船全体のバランスをとり、スピードを上げていく。

潮田「いつごろからオリンピックって意識されました?」
岡田「小学校2~3年生」
潮田「え~早い」

父、正和(まさかず)さんのすすめで5歳からヨットを始めた岡田。
唐津西高校ではインターハイ優勝。
全日本3連覇の強豪早稲田大学ヨット部で主将を務め、「風を読む力は天才的」と言われてきた。

潮田「外薗選手に伺っていきたいんですけどすごい経歴がおもしろいんですよね。小学生では相撲、中学生は陸上」
外薗「相撲をしていたときの足腰の強さとか、陸上の長距離をしていたんですけどもしかしたらつながっているかなとも思います」
潮田「どうして相撲、陸上からセーリングへとなったんですか?」
外薗「ヨット部入ったら合間に釣りできるんじゃないかと思ったのもあって、最初はそういう気持ちではいりました」
潮田「へ~」

天才肌の岡田と遅咲きの外薗。
2人を出会わせたのは、チームの監督である関一人(せき・かずと)さんだ。

関「なんとか岡田に結果を出させるためにどうすればいいのかなと考えたときに、外薗は小さいんですけど、経験はありますし、動作の動きもいい、人間性にも魅力を感じていたので」

2人がペアを組んだ年2018年のワールドカップで日本人男子として初優勝。
オリンピックへの風を一気につかんだ。

潮田「実際最初に乗った時、どうでした?」
外薗「センス抜群で、スピードを出すセンス、風の拾いかただったり、違いましたね」
潮田「岡田選手いかがですか?」
岡田「外薗さんはうまくやってくれて、自分がやりやすい環境を作ってくれたというのはあったので、そういう才能があるなというのがありました」
潮田「私もダブルス競技をやっていたので運命を感じるというか、その自分の本来持っている力以上のものが発揮できて強いペアとなるという感覚があったんですけどお二人はどうですか?」
岡田「もちろんありますね。うまい、上手からどうプラスアルファがあるかというのがっても大事で、プラスアルファがとてもあったので、とてもいいな」

オリンピック代表選考の基準は、3つのレースの総合成績。
スペインのプリンセスソフィア杯。
世界選手権、そしてワールドカップの3つの大会だ。

去年8月、最終選考のワールドカップ。
風が強めのコンディションが続き、ゲームメークが難航。
懸命に舵をとる。

オリンピック出場をかけたレースのプレッシャーは大きく、結果は11位。
しかしながら、選考3大会の総合で岡田・外薗組は日本勢1位となった。
たった1つしかない470級男子代表の座をつかみ取った。

岡田「夢見てきた場所にようやくたどりついたといううれしさがあります」
外薗「うれしいのとともに、ほっとしたかな」

九州出身ペアがつかんだ東京オリンピックへの切符。
しかし、世界のトップセーラーの壁は厚い。
世界ランキング7位の岡田・外薗がメダルを争うためには、ある課題があった。

外薗「僕が他の海外の選手と比べて身長が低いので(174センチ73キロ)やっぱり風が強いと、身長が高い方が有利」

強風では、船が安定感を失い、選手は傾いた船を水平に戻す必要がある。
小柄な体格だとボートのバランスがとりづらく、条件的には圧倒的に不利だ。
身長174㎝の外薗だがヨーロッパなど海外のセーラーと比較すると体が小さい。
課題を克服するため強化合宿へと向った。

沖縄県・慶良間諸島にある
座間味島(ざまみじま)
12月日本代表の強化合宿。
セーリングに欠かせない筋力を鍛え上げる。

岡田・外薗組の課題は小柄な体格がゆえに苦手とする強風に、いかに対応するか。
そこで2人はヨットの道具、マストやセールの傾きなど細かい部分を整備し、世界のセーラーに挑もうと考えた。

岡田「道具を使ってどれだけ速くなれるか走りやすくなるか 試しているところ」

シンプルな作りにみえるヨットだが実は、小さな部品の集合体。
その調整がセーリングの速さに直結する。
強い風を求めてやってきた座間味島(ざまみじま)の沖。
船の部品の微調整でどのように走りが変わるのか。
ひたすらテストを繰り返していた。
外薗は、傾く船上でもマストによじのぼり部品をミリ単位で調整する。

さらに。

外薗「ためすぎ?」
岡田「ためすぎというより、遅いから、波に乗りづらい」

2人のコンビネーションを高め、スピードの向上につなげようと必死だ。
海上練習は連日5時間にも及んだ。
2020年。
オリンピックイヤーの初戦。
ワールドカップ・マイアミ大会。

世界各国からセーラーが集い実力を試す時が来た。
強風の日もある中、6日間のレースで安定した走りを見せた岡田・外薗組。

結果は、トップとわずかの差で銀メダル。
世界ランキング1位のチームを破るなど幸先よいスタートを切った。

潮田「オリンピックまでいよいよ半年をきった。目標を聞かせていただいてもいいですか?」
岡田「オリンピックではもっと小競り合いになるので、様子の見合いになるのでもっともっと経験して考え直して次に進んでいかなきゃいけない」
外薗「しっかりとコミュニケーションをとっていって1+1が3でも、4でも、5でも6でもなれるようなチームになっていきたいと思います」

紺碧の海に真っ白な帆を張り突き進め。
東京オリンピックの舞台へ。