番組向上への取り組み
番組審議会だより
第628回(2026年7月15日)
- 審議対象番組
- 番組審議「ナンデモ特命係 発見らくちゃく!命の危機…ゴミ屋敷大掃除!」 (制作部)
- 放送日時
- (前編)2025年4月13日(月)23時25分~23時55分
(後編)2025年4月20日(月)23時25分~23時55分
議事の概要
「ナンデモ特命係 発見らくちゃく!命の危機…ゴミ屋敷大掃除!」
6月16日にBPOから放送倫理上問題ありとの決定を受けたことを報告しご意見をいただいた。
【BPO決定の概要】
申立ての対象は、福岡放送が2025年4月13日と20日に放送したバラエティー番組『ナンデモ特命係 発見らくちゃく!』で、視聴者からの依頼によって、高齢で一人暮らしの伯父の自宅を清掃する様子を「『命の危機』ゴミ屋敷大掃除!」と題して、前編・後編に分けて放送した。
これに対し、その住人男性と(依頼者ではない)親族2名の3名が「ウジ虫やネズミのミイラの映像が強調され、過剰な演出や構成によって当事者を貶めた」等として申立てを行った。このほか、住人男性は、清掃によって大切な物品まで捨てられたこと、親族2名は、自らのプライバシーに触れられたことや、少年期の写真を無断で放送されたことについて、それぞれ権利侵害を訴えた。
委員会では、自宅の不衛生な状況の放送内容について、不衛生さをことさらに強調した編集部分は、視聴者参加のバラエティー番組における出演者に対する配慮を著しく欠如し、礼を失して、男性の自尊心に大きな悪影響を与えかねない、いき過ぎた演出・編集であるとして、人権侵害には当たらないものの、放送倫理上問題があると判断した。
一方、住人男性の清掃で大切な物品を捨てられたという申立てと、親族2名の申立てについては、人権侵害や放送倫理上の問題は認められないと判断した。
委員のご意見
- タレントのコメントの中には、あの場限りであれば聞き流せても、不特定多数が見る、録画して何度も見られる、ネットなどで拡散される、そういった可能性があるため、編集でカットしたほうがよかったものもあると感じた。
- 番組は、独居の高齢者とごみ屋敷という社会的な課題を取り上げて、実際に住環境の改善まで実現している。BPOの決定でも、社会的課題を取り上げた公益性も認められ、かつ、居住者の自宅の清掃、生活環境の改善も実現している。また、居住者自身の描き方も一定のリスペクトが感じられ、一方的におとしめる番組構成とはなっていないと評されている点は評価したい。
- BPOは放送倫理上の問題があったと結論づけてはいるが、今回、書面での同意書がなかったにせよ、実名、顔出し出演をあらかじめ承諾して、番組内容も口頭で説明し、明確に理解、同意した上で撮影に応じたと委員会も認定している。事実に相違がなく、本人の同意も実質的に得られている以上、放送局の表現の自由及び編集権の核心を尊重すべきで、番組の演出、編集の裁量はできる限り尊重されるべきだ。
- 社会課題自体をリアルに伝えるためには、ある程度踏み込んだ描写も必要であり、必要以上に人権への配慮を求めて表現を薄めては、番組の公益性や訴求力を損ないかねない。
- 改善すべき点があるとすれば、撮影、放送内容についての同意を口頭だけでなく書面で取り付けておけばよかった。この点は既に改善が図られていると聞いており、FBSの前向きな取り組みを評価したい。
- 申立てがあった段階で配信停止や肖像の取扱いに関する謝罪といった対応をしている。今回の決定を踏まえ、FBSには、萎縮することなく、事実に基づき、かつ本人の同意を前提に、社会的に意義ある番組づくりを続けてほしい。
- バラエティー番組として非常に練り上げられていて、最後まで引き込まれる内容だった。前・後編一気に見たが、テンポもよく、当事者と少しずつ距離を縮めていくところや、問題を解決していく流れなど、効果的だった。
- 高齢者の孤立や、家族との関係といった社会的なテーマも自然に織り込まれており、バラエティーを軸としながらも、家族との関係といった人間ドラマや、社会課題、そういった要素を持っていることが、この番組の魅力だと感じた。
- バラエティー番組らしいリアクションで、家の中に入った場面では、臭い、汚いという言葉が何度も繰り返されたり、出演者やスタッフの笑い声もそれにかぶせて、重なったりして、かなり誇張されていたように感じた。
- 演出について、ウジ虫やネズミの死骸などの刺激の強い映像が繰り返し映し出された。状況の深刻さを伝えるという目的は理解できるが、インパクトを優先している印象を多分に受けた。
- 住人を笑い物にしようといった意図は感じなかったが、リアクションや編集が重なることで、バラエティー的な悪乗りが見える部分があった。小ばかにしているように受け取る視聴者がいても不思議ではないと感じた。
- 一般の方が出演する番組だからこそ、視聴者を引きつけるエンタメ性と家族や出演者に対する尊厳や配慮、その二つが高いレベルで両立していくことが求められる。
- 現場が必要以上に萎縮して、この番組が本来持っている挑戦する姿勢が失われることは、視聴者も望んでいないと思う。今回の指摘は、番組の価値を否定するものではなく、一般の方を扱う際の表現や配慮をさらに磨き上げていくための契機と受け止めるべきだと思う。この経験を糧にさらに質の高い番組へと発展していくことを期待している。
- 番組内容はごみ屋敷をどうするかばかりで、なぜこういう現状が生じるのかという高齢者の独居問題の背景についてまでは掘り下げられていなかった。
- この番組を見て、人権侵害という場面はあまり見られなかった。ただ、社会問題をバラエティーとして捉えていくことの難しさは感じた。
- 今回の一番のポイントは家族から申立てられているということで、手続というか家族との信頼関係みたいなところが大きな課題だった。
- ごみ屋敷に入るときにタレントが、本当に危険だから、命も危険だし、健康のためにやりますからねと何度もご本人に言っていて、画面を通しても、事前説明をしていたことがよく分かって、納得のいくプロセスを踏んでやっていたのだと思った。
- タレントが、高齢者の終活問題についてコメントしていた。バラエティー番組であり、依頼があって片づけをしているのだが、終活でもあるとカメラに向かって語っていたのはよかった。
- 非常に真面目に番組を制作していることがうかがえた。確かにタレントのべらんめえ口調というかエッジの効いた芸人らしいコメントは強いが、素材を生かし、ドラマ性もあって、視聴者として大きな違和感は覚えなかった。BPOが「名誉毀損、人権侵害というものではない」という結論だったというのは、そのとおりだと思うし、本素材がBPOにかけられることにやや違和感を覚える。
- 今回は、ごみ屋敷当事者のおいの方からという間接的な依頼であったため、当事者の高齢の人形師の方と制作側とのやり取り、収録外でのコミュニケーションが希薄だったのではないか。