番組向上への取り組み

番組審議会だより
第598回(2023年6月21日)

審議対象番組
「目撃者f 危険木D-6 ~100万本の景観の犠牲~」(報道部)
放送日時
2023年5月28日(日)25:30~26:15放送

議事の概要

番組内容

2019年7月、国の特別名勝・佐賀県唐津市の虹の松原で、折れた松の木と県道を走行中の車が衝突しました。この事故で、母親の運転する車の助手席に乗っていた当時小学5年生の川﨑辿皇君の胸に木の枝が突き刺さり、辿皇君は亡くなりました。この松の木について行政は事故の6年半前、「将来重大な事故が発生するおそれがある」と判断していたことが明らかになりました。虹の松原の県道沿いには、今も「倒木などの危険度が高く、撤去が望ましい」とされる木が約180本残されています。危ないと分かっているのになぜ伐採されないのか・・・背景には「国」「県」「市」で複雑に絡み合う管理体制がありました。

委員のご意見

  • 景観と安全のどちらが優先されるべきかとの問題も絡み難しい構図だったが、国・県・市が複雑に絡み合う虹の松原の管理体制が問題の背景にあると分かりやすく整理されていた。
  • 公正さを意識した取材や番組づくりが行われていた。鑑定結果を現地現物で確認したことや、佐賀県が実施した緊急調査に関わった樹木医だけではなく、第三者にも見解を聞いたことなど、多面的な取材をしようとする姿勢が随所に感じられた。
  • 「虹の松原は唐津の象徴」という市民の思いそのものには何ら問題はないが、景観を守ろうという行政側の思いの強さが、事故予防の施策を講じることの妨げになっていたのではないかという疑問を投げかけており、とても意義のある番組だった。
  • 景観と命はどちらが大切なのか問題提起し視聴者に判断を委ねる番組だった。ただ遺族の悲しみと安全性の責任、どちらにウエートが置かれているのかといえば、遺族の悲しみにスポットが当たりすぎていて、行政の責任追及がぼやけてしまった印象がある。
  • 警察の捜査で運転していた母親の前方不注意が事故原因で、母親が起訴猶予となっている。母親が運転した車の状況と母親の主張だけが扱われており、警察の判断根拠について、より掘り下げて知りたかった。
  • 事故が前方不注意なのか、上から木が落ちてきたのかをより探ると、係争中の民事裁判で「前方不注意による過失割合が大きく、賠償責任を負わない」という行政側の主張も崩れてくると思う。もう少し追及してほしかった。
  • 事実関係だけではなく、こういう事件に詳しい弁護士や専門家なりのコメントや、両サイドのコメントなどがあるともう少し分かりやすい。
  • 事故が発生した2019年7月20日の情報が、番組開始から約6分半後に出てきた。記憶に新しい事故であったとはいえ、番組の時系列上、もう少し早い段階で、契機となった事故の時点をはっきり示すこともあり得たと思う。
  • 番組の最後に視聴者へ投げかけた「美しいと言えるでしょうか」という言葉はとても心に響いた。一方で、「美しいと言ってはならない」との含意が感じられ、ニュアンスとしては強過ぎたのではないか。