番組向上への取り組み
番組審議会だより
第591回(2022年10月19日)
- 議題
- 1.「福岡放送 放送基準」改正について (総務局 コンプライアンス推進部)
2.「目撃者f 心が大人になる前に 父娘(おやこ)で歩んだ14年」(報道局 報道部)
- 放送日時
- 2022年9月25日(日) 25:50~26:20放送
議事の概要
1. 「福岡放送 放送基準」改正について
「民放連 放送基準」が一部改正されるのに伴い、福岡放送番組基準の改正が諮問され、「妥当である」との答申がありました。
2. 「目撃者f 心が大人になる前に 父娘(おやこ)で歩んだ14年」
番組内容
24 時間テレビのドラマ、映画化もされた書籍「はなちゃんのみそ汁」。原作者の安武信吾さん(58)の娘・はなさん(19)は幼少期、がんで闘病していた千恵さん(享年 33)から、みそ汁つくりを学びました。「台所から世界を変える」―みそ汁づくりを通して生きる力を伝えようとした母との別れから 14 年。大学生になったはなさんは、母の想いを受け継ぎ、食品開発を学んでいます。そんな娘の成長を見つめてきた父・信吾さん―。父と娘が歩んできた道のりは平坦ではありませんでした。ずっと胸にしまい込んでいた、母に会いたいとの想いがあふれて涙した日、会話もなくなった反抗期、反抗期の娘が父へ宛てた一通の手紙、そして今、父が「最後の子育て」として娘に伝えようとしていることとは―12年間続けた取材を振り返り、安武さん父娘の来し方と今を凝縮してお届けします。
委員のご意見
- 信吾さんと、幼少期から多感な時期を経て大人へと成長するはなさんの、微妙な関係性の変化が全体を通じてうまく描写されていた。
- 12年間という長い取材期間があるのはネットの動画とは全く異なる性質のもので、こういったことができるのがテレビの強みだと思う。
- 最初と最後に父と娘で階段を上るシーンがある。最初は信吾さんと幼いはなちゃんが手をつないで階段をのぼり、最後は大人になったはなさんが、父と手をつながずに日傘を差してのぼっていた。2人一緒に階段をのぼる「変わらないもの」、娘が大人に成長する「変わるもの」がよく対比されていて印象的だった。
- はなさんが反抗期の頃に信吾さんへの手紙で、「はなの心が大人になるまで待ってね」と書いていた。なかなか反抗期にそんな手紙を親に書けないだろうからすごいなと思い、どうしてこんな人の心に残るような表現ができるのかという気持ちになった。亡くなった母親を含め家族の中で、そういう言葉や表現をとても大切にされているのかと思った。
- タイトルにもあるとおり、心が大人になるまで、見守りながら待つことが必要なときもあると、子供との接し方に迷っている親には多少ならずとも救いになったのではないか。
- 開始から10分ぐらいで、ナレーションが柔らかい女性の声から、「私」という男性の声(取材ディレクター)に代わった。ドキュメントで語り手が「私」と出てくるのは相当なことと思い、その瞬間に番組に引き込まれた。
- 番組後半で死別の経験を共有する場がグリーフということで出ていたが、メディアで取り上げたことで、このような場があると認知が広く進む。同じように悩んでいる方にとって、いい取り上げ方だったと思う。
- 父娘の対話が非常によかった。「父親と娘」としてではなく、個々の人間として話を引き出そうとしているのがよく分かった。何を感じ取るか視聴者によって違うと思うが、とても知的な雰囲気と可能性に満ちた番組だったと思う。
- 今回の取材対象がはなさんという若い女性だったこともあって、プライバシーへの配慮という観点が気になった。自宅マンションが特定されてトラブルを誘引するのではないか。
- はなさんの在籍する大学名が番組内で紹介されていた。放送による周囲の反響を考えると「福岡県内の大学」くらいの紹介でもよかったのではないかと思った。本人の承諾を得ているとは思うが、はなさんが傷ついたりしないよう配慮が必要だと思う。
- なぜ安武一家を取り上げたのかと番組の途中まで疑問に思い続け、独りよがりじゃないかとも感じた。番組の早い段階で、この家族のことをずっと取材してきたこと、書籍の続編が出たのを機に、これまでの親子の人生を振り返る…といったことを一言入れてもよかったのでは、と思った。
- コヤナギシンジさんの歌が挿入されているが、なぜこの歌だったのかということ、何の意味があって入れたのか、疑問に思った。
- ネットで検索すると、みそ汁を作らせることが虐待ではないかなど、否定的なコメントも書き込まれている。安易な食事療法、近代的な先端医療を拒むというような批判もあったと思う。ネット上の意見も認識して制作したのか(制作サイドから「批判を認識したうえで、亡き母が子供に生きる力として教えたものと納得していただく狙いもあった」と回答)。