番組向上への取り組み
番組審議会だより
第586回(2022年4月20日)
- 審議方法
- 福岡県の新型コロナウイルス新規感染者数は一日に2000人前後と、じゅうぶんな減少とは言えないことから、引き続き警戒のため書面による審議とした。各委員からの書面は4月20日までに事務局に提出され、番組制作者が回答。事務局が質疑の形式にまとめた。
- 審議対象番組
- 「NNNドキュメント’22 誰もわかってくれない ーコロナ後遺症 長期化する闘いー」(報道部)
- 放送日時
- 2022年4月10日(日) 24:55~25:25放送(30分)
議事の概要
番組内容
新型コロナウイルスは2022年の第6波で「オミクロン株」に置き換わり、高い伝播性で猛威を振るっています。その勢いが若干鈍化した3月21日をもって全国の「まん延防止等重点措置」が解除され、人々は感染対策を続けながら日常を取り戻そうと、徐々に動き出しました。
一方、感染して「陰性」となってからも、様々な症状に襲われる「コロナ後遺症」に苦しんでいる人達がいます。発症のメカニズムなど、解明されていないことが多い中、闘病を続ける患者や治療法を模索する医療現場を追いました。
*【ナレーター】玉川砂記子
※「NNNドキュメント」は日本テレビの系列各局が制作するドキュメンタリー番組。今回は、FBSエリアの「目撃者f」枠で2022年1月30日放送分を再編集した全国ネット版を議題とした。
委員のご意見
- 4月から、厚生労働省がコロナ後遺症の実態と影響を調査するというニュースが流れていたので、国レベルでも実態の把握が遅れているのではないか。したがってこの番組は、コロナ後遺症の実態解明に先鞭をつけるような役割を果たしたのではないか。
- コロナ後遺症の理解が進めば、今後、支援活動などに結びついていくのではないか。その意味で、この番組が社会に伝えるメッセージは非常に大きいものがある。
- 後遺症自体の苦しみと同時に、周りに理解されない苦しみを訴える内容だが、今回の副題である「誰もわかってくれない」が、今一つ伝わってこなかった。時間の関係もあるかもしれないが、患者の言葉だけではなく、もう少し深い取材が必要なのでは。
- こんなに身近で多くの人がかかったコロナウイルス感染症によって、私たちは生き方、考え方が大きく変わったことなども、共に考える番組なども作ってほしい。
- 思いがけない出来事によって人生が変わる場合があること、誰に起こるかわからないこと、できるだけ正しく理解する必要があること、苦しむ人に寄り添う気持ちが大切であることを感じるとともに、可能な範囲で新型コロナ感染拡大の防止を続けることが必要だ。
- WHOによる新型コロナ後遺症の定義や主な症状が紹介されていたが、非常にわかりやすかった。専門機関や感染症の専門家による調査結果等の知見が紹介されたことで、新型コロナウイルス感染症の最新情報が得られ、説得力があった。
- 森内教授が登場し、「(ウイルスが直接引き起こした症状ではないケースもあるので)すべてを後遺症として一括りにするべきではない」と述べ、「心理・社会的なストレス」の存在を強調していた。私としては、その「心理・社会的ストレス」の捉え方に割り切れなさを感じた。「誰もわかってくれない」という声をどう伝え、どう理解してもらうのか。本当に難しく、割り切れない問題だ。
- 最新の現代医学をもってしても、このウイルスについては、いまだに解明されていないことが多く、歯がゆい思いを禁じ得ない。今回の番組では、そうした不明な部分にスポットを当て、丁寧に取材を重ねていた。
- もう少し踏み込んでもらいたかったのは、周囲の人が後遺症に苦しむ患者に対し、どのように接しているかという点だ。何らかの支えがあったのであれば、その取り組みを紹介して欲しかった。そうすれば、番組を見た人は、同様の後遺症に苦しむ人が周囲にいた場合、手をさしのべようと思うかもしれない。
- 後遺症に苦しむ3人の方の姿とその思いに迫ることで、後遺症が人生を変えてしまう程の大きな影響を与え得るという深刻さを、よく描き出していた。
- 後遺症の専門外来があること、上咽頭擦過治療を受けた患者の8割には、3か月以内に改善効果が表れていることなどは、患者の後遺症の壮絶な苦しみがある中で、希望を感じられるものだった。
- 本番組の主題、ドキュメンタリーを通しての視聴者へのメッセージは何に焦点を当てられたものだったのか。番組の締めくくりの部分において、そのメッセージがもう少し力強く伝わるようなナレーションや構成の工夫があった方がよかった。
- コロナの後遺症でどのように苦しんでいて、ストレスを抱えているのかということが、3名の姿を通じてよく理解できるが、「だからどうすべきなのか」「どう変えていくべきなのか」というメッセージがあれば、もっとよい番組になるのに、と少々残念だった。