番組向上への取り組み
番組審議会だより
第585回(2022年3月16日)
- 審議方法
- 福岡県は新型コロナウイルス感染拡大を受け、3月6日まで「まん延防止等重点措置」の対象である。新規感染者数の減少がみられないことから引き続き警戒のため、書面による審議とした。
各委員からの書面は3月16日までに事務局に提出され、番組制作者が回答。事務局が質疑の形式にまとめた。
- 審議対象番組
- 「目撃者f 俺がつなげてやる ~コワモテ“説得屋”の生き様~」(報道部)
- 放送日時
- 2022年2月27日(日) 25:25~25:55放送(30分)
議事の概要
番組内容
長期ひきこもりや暴力・薬物依存など、家庭内で問題行動を起こす人たち。彼らの多くは精神に問題を抱えていて、定期的な通院や服薬で普通の生活が送れるという。押川剛さんはそんな家族の依頼を受け、本人を説得、専門機関で適切な医療を受けることで更生・自立につなげるコーディネーター。いかに迅速に家族に介入して、本人の理解・納得を得ることができるかが解決への鍵となる。「みんなが誰かとつながっていればこんな仕事は必要ない」という押川さん。精力的に“説得”に取り組む押川さんの活動を追ったドキュメントです。
【ナレーター】松吉ゆかり
委員のご意見
- 番組を見ているうちに、長期のひきこもりや、薬物依存、精神疾患、家庭内暴力に苦しんでいる人たちに対し、「説得屋」の押川さんが真正面から向き合い、最後の頼みの綱になっているということがよく伝わってきた。
- 押川さんがやっておられるのは大変な事だと思うが、コワモテ“説得屋”の押川さんだからこそできる、特別なことなのか。「精神障害者移送サービス」や「説得移送サービス」という言葉が使われていたが、押川さん以外に同じようなことをされている方はおられるのか。
- 長期のひきこもりの社会問題を解決するためには、押川さんのような個人の努力だけでは限界があるように思う。制度や法律の不備などを指摘し、改善に結びつけるような提言まで踏み込んでも良かったのでは。
- 「戦い方を(家族に)教える」という言葉も出てきたが、悩みを聞くこともされているのか。そのあたりがあまり出てこなかった。
- 映像の半分程度が「映像提供:トキワ精神保健事務所」だった。押川さんが、守秘義務をどのように考えて扱っておられるのか、不安を感じた。
- 依頼者(家族)と患者は、類型的に利益相反関係にあると言える。法律が改正されて患者の意思が重視されるようになり、家族・医師・行政などの現場が苦労するようになったのは、そのためだ。番組では、この点に関する悩みが感じられなかった。
- 退院しても多くの人が再入院を強いられる。地域で社会生活を送る環境整備が進まないためである。番組では、この点に関する悩みも感じられなかった。大学で法律を学んだ押川さんが、このような点をどう考えておられるのかについて、聞いてみたかった。
- 薬物依存症で苦しんでいたユキさんが更生し、母親となり社会復帰した姿を見ることは「介入したことが正しかった」ことを押川さんが実感する機会になったのではないか。
- コロナ禍以来、ますます閉塞化の進んでいる状況が思い知らされた。家庭間ばかりか家庭内での孤立も深まる中で、人間がどうやって社会とつながるべきなのか、考えさせられる好番組であった。
- 心臓に疾患を抱える押川さんが、「満足いくところまでは死ねない」といった一言が耳に残った。彼にとっての「満足」は、「自分が必要にされなくなること」なのだとわかり、深い感銘を受けた。
- 「危機介入」という特殊な業種だけに、負の側面や社会的批判も、少なからず存在する。今回の番組の主旨からは外れるかもしれないが、そうした否定的な側面も、やはり具体的に(第三者的に)触れておくべきだった。
- 長年にわたる取材を通じて、押川さんが依存症や精神疾患に苦しむ人たちを治療につなげようと懸命に奮闘する姿を、しっかり描けていた。
- 「人間としてのつながりが立ち直りには必要」「事件を起こさない限り、人とつながらない時代になってしまった」といった押川さんの言葉は重く、胸に突き刺ささった。
- 押川さんの生き様をテーマにしたためか、生い立ちから今の仕事を始めるまでの経緯、仕事内容を広く知ってもらうための漫画制作、北九州市立大法学部での日々、さらに、自身の心臓疾患に至るまで、やや詰め込みすぎの印象も受けた。
- 3月8日に政府が刑法改正案を閣議決定したが、こうした大きな流れも踏まえて、押川さんの取り組みを紹介すれば、多角的な視点を視聴者に提供できた。
- 「説得屋」「精神障害者移送サービス」というものがあることを本番組で初めて知るとともに、年間500件もの相談が寄せられている事実は、そうしたサービスが存在しなければならないほど、家族でも行政でも解決できない深刻な問題が広く存在することを実感するものであり、「目撃者f」らしい、社会的課題に迫るテーマだった。
- 25年にわたりこの仕事をやり、体調がよくないにも関わらず、更に前に向かおうとする彼の姿は本当に凄さを感じた。