番組向上への取り組み
番組審議会だより
第580回(2021年9月15日)
- 審議方法
- 福岡県は緊急事態宣言発出中のため、書面による審議とした。
各委員からの書面は9月15日までに事務局に提出され、番組制作者が回答。
事務局が質疑の形式にまとめた。
- 審議対象番組
- 「目撃者f 防人たちのレクイエム ~絵手紙が伝える戦後76年~」(報道部制作)
- 放送日時
- 2021年8月1日(日)深夜2:30~3:00
議事の概要
番組内容
太平洋戦争のさなか、遠い戦地から家族に400通もの絵手紙や書簡を送り続けた兵士、伊藤半次さん。半次さんの孫である福岡市の博文さんは、その温かいタッチの絵と、愛情こもるメッセージを託されました。旧満州から沖縄に転戦し、ついに我が家に帰ることが叶わず32歳で消息を絶った祖父は、いったいどういう状況でこの手紙を書き続けたのか。戦後76年、現在も祖父の足跡を辿り続ける博文さんの活動を通して、家族がともに平穏に過ごせる幸せや平和の尊さを考えます。10年間の取材をまとめたドキュメンタリー番組です。
≪語り≫中谷萌(FBSアナウンサー)
委員のご意見
- 戦後76年が経った今、これまでと異なる視点で戦争や家族について考えさせられる番組であった。文字だけでなく絵が添えられることで、手紙の内容がより直接、リアルに伝わってきた。
- 戦地にいながら、なぜこのような絵が描けたのか。内地の家族に心配をかけたくないという、伊藤半次さんの思いやりからか。それとも、軍の検閲をはばかってのことか。伊藤半次さんが旧満州にいた時はそれほど戦況が厳しくなく、絵手紙通りの日常があったのか。番組で紹介された絵手紙がそれほど多くなかったので、そのあたりの事情がよく理解できなかった。
- 広島の谷田悦子さんとの出会いや、谷田さんの姉の婚約者・堀田熊雄さんの絵手紙と、伊藤さんの絵手紙との関係がすっと入って来ず、2度見てやっと理解出来た。30分間に、情報を入れ過ぎたのではないか。
- とてもよい番組で、30分がとても充実していた。伊藤半次さんの家族に対する思い、博文さんの祖父・半次さんに対する興味と感謝、それを支援する人たちの強い思いなど、様々な気持ちが画面を通して伝わって来た。 激動する今を生きる我々に対して、示唆を与えてくれる番組だった。
- ナレーションで、「あなたが今願っていることは何ですか?」「あなたが会いたい人は誰ですか?」「あなたは今大切な人に何を伝えますか?」と問いかけがあった。今はコロナ禍で家族や友人とも会えず、一緒に食事をすることもできない状況が続いている。この番組を視聴して、家族や友人など大切な人に伝えられることを言葉や文章などで伝えていきたいと思った。
- 決して大仰でなく、淡々と綴られた伊藤半次さんの絵手紙の朗読と、中谷アナウンサーのナレーションが絡み合うラストには、胸を打たれた。いまを生きている私たち自身の「生」と、戦死した半次さんの「生」が自然とつながるような、素敵な演出だった。この不思議なつながりを噛みしめるにつけて、愛する家族に会えないまま命を落とすほかなかった半次さんの無念さが、理屈抜きで伝わるようだった。
- 番組は伊藤博文さんが福岡南区浄福寺で野戦重砲兵第23連隊の戦没者名簿に半次さんの名を記すところから始まる。そこで気になったのが、半次さんの沖縄での戦死はすでにはっきりしていたのに、戦後76年も経って初めて名簿に記載されるのはなぜ?と混乱する視聴者もいたのではないか。
- 中学生の生徒たちに博文さんが語りかける授業のシーンには、戦争の記憶を次世代に伝えていくという番組のメッセージが込められているように感じられた。生徒たちの言葉から、博文さんの思いをしっかりと受け止めていることがうかがわれ、優れた締めくくりとなっていたと評価できる。
- 半次さんが転戦した中国戦線や沖縄戦の経緯や被害の全体像について、当時の写真や映像、地図などを組み合わせて、丁寧な説明があれば、視聴者の理解を助けたのではないか。
- 広島市の堀田熊雄さんから谷口さんの姉に送られた絵手紙の紹介もあったことにより、伊藤半次さんだけでなく、出征した全ての兵士一人ひとりに大切な人がいたこと、戦争はそうしたたくさんの人々の日常の幸せを奪っていったことを、更に厚みを加える構成になっており、視聴者に、平和な日常のありがたさや、決して再び戦争を起こしてはいけないというメッセージを力強く伝える内容であった。
- 冒頭に「祖父・半次さんの沖縄での足取りを追う博文さんの10年間」というナレーションがあったが、番組では2014年、2017年に博文さんが沖縄に調査に出向かれる様子が紹介されていたものの、「10年間」という経過がよくわからず残念だった。
- 素晴らしい番組であるにもかかわらず深夜の放送であり、これからの時代を担う子供たちも含め、多くの人たちが視聴できる時間ではないことを残念に思う。来年の8月でもいいので、子供たちも視聴できる休日のお昼の時間帯の再放送を検討してはどうか。