番組向上への取り組み
番組審議会だより
第575回(2021年3月17日)
- 審議対象番組
- 「目撃者f シリーズ 福岡コロナショック(6) 外出自粛の街~にぎわい消えた夜に~」(報道部)
- 審議対象日
- 2月28日(日)
- 放送時間
- 25:50~26:20
議事の概要
番組内容
新型コロナウイルス感染症が福岡に与える影響について、2020年6月からさまざまな視点で伝えている「シリーズ 福岡コロナショック」。6回目の今回は、感染拡大のため2度目の緊急事態宣言が発出された福岡の「夜」がテーマです。老舗天ぷら店の灯りを消すまいと、出口の見えない時短営業を続ける女性店主、コロナウイルス感染で亡くなった遺体を送る霊柩車を消毒する特殊清掃業者の男性、困窮した路上生活者を支援するために夜の街を巡る男性。コロナ禍を生きるそれぞれの人間模様を静かに見つめます。
【出演者】
*ナレーション:伊藤舞アナウンサー
委員のご意見
- 天ぷら店の小柳さんの日常を淡々と映し出すことで、経済的な苦境とやりきれない思いが自然に伝わった。
- コロナに感染して亡くなった人を運ぶ車の清掃業は、エッセンシャルワーカーに位置づけられるのではないか。
- 森さんはダイヤモンド・プリンセス号の消毒にも関わって、やりがいのある仕事だと語っていた。そういう作業を行う姿が印象に残り、改めてコロナ禍の社会はこういう人たちの力で支えられて成り立っていると視聴者に伝わったのではないか。
- コロナ禍のしわ寄せが経済的困窮者に非常に厳しい形で及んでいることを改めて浮かび上がらせたのではないか。比較的若い世代の人が、仕事がなくて困っている状況は深刻で、どうやって支援していくのかは難しい問題だと思うが、ボランティアや行政も加わった支援が必要だろう。
- 3本それぞれはとてもよかったが、三つまとめて見るとオムニバスのようで、全体としてのまとまりが乏しいのではないか。どれかひとつだけで30分の番組を作れるぐらいのテーマ性を持っていた。
- とても淡々と進む感じで安心して見ていられた。自分だったら何ができるんだろうと考えを迫られた。
- 伊藤舞アナウンサーのナレーションがとても穏やかで、落ち着きがあってよかった。感染や生活への不安を抱えている人々にできる限り寄り添いたいという気持ちの伝わる語り口で、温かく優しい雰囲気で心地よく感じた。
- 森さんについては、子供たち相手に空手の指導をしている場面から始まったのがとても効果的だった。ごく普通に社会生活を営んでいる方が、同時に除染作業の最前線にいるという事実がすんなりと伝わって、いい影響を与えた。
- 関東地方から来た路上生活者の方が、「何もかもコロナのせいにしているが、結局は自分のせいなんだ」ということを言っていた。「自己責任だ」と思う人がいないとも限らないが、編集をする際にどういう意図でこのコメント部分を出したのか。
- 30分という短い時間に、端的に何が問題となっているのかを視聴者に伝え、訴えかける内容だった。
- 新型コロナウイルスに感染してから短期間で亡くなる方が多いことや、心の準備ができないままに大切な人を亡くしてしまう家族の心中を推しはかっている森さんの言葉が心に残った。
- 「夜」という、一般には気づかれにくい時間帯のいろいろな仕事や活動に焦点を当てたことがよかった。
- 三つの柱を並行的に報道していたが、いろいろな立場の方がそれぞれ頑張っていらっしゃると捉えることができた。みんなが頑張ることによって、これからもいろいろ大変だけれども、希望を持てる気持ちになった。
- 森さんは特殊な仕事のために、近所から不安の声が上がったり嫌がらせをされたり、そういうことはないのか心配だ。
- 「おにぎりの会」の木戸さんは、NPOの活動に加えて独自に街を回っているということが紹介されていたが、本業と会の活動をどう両立しているのか、興味を持った。
- 「緊急一時宿泊施設」がどういうものなのか、NPO活動とどういうふうにつながっているのかが見えずに分かりにくかったところもあったので、言及があればなおよかった。
- 番組の制作プロセスで、現場の取材をベースにして客観的データで裏づけを取ろうということを考えていたのであれば、「ジニ係数」のような経済マクロ指標を提示することも検討できたのではないか。
- 苦境にある人々をどういうふうに支援して、どういうふうに寄り添っていけばいいのか、大上段に構えずに市井の方々の生き方を淡々と紹介することで世に問うという、ある意味で非常に福岡放送らしい番組だった。
- 取材した木戸さん・森さんのことを、どうやって見つけてこられたのか知りたい。
- ニュースでも取り上げられないようなところに目を向けた番組をこれからも作っていただきたいが、放送時間が遅いので、どれだけの方が見られたかと思うと、ちょっと残念な気がする。
- 「目撃者f」でシリーズ化され、視点を変えながら、コロナの影響で変わる社会や生活、人々の奮闘などを継続的に取材し、前を向き進んでいくことの大切さをメッセージとして発信し続けておられることは大変すばらしい。
- 「おやじがコロナを知らなくてよかった」という小柳さんの息子さんの一言は、コロナがもたらしたものは、飲食店への経営的な影響だけでなく、生きがいである仕事を奪われるつらさを端的に表しており、丁寧な取材が生きた内容だと感じた。
- 的確な作業の段取りで進められる霊柩車の消毒作業の一連の映像と、森さんへのインタビューの内容は、感染リスクと隣り合わせの仕事に高いプライドと責任を持って取り組まれる真摯な姿をよく捉えており、心に響いた。
- 行き場を失った方々の心に寄り添い、力を尽くすボランティア活動の実態と、それに携わる木戸さんの思いが伝わる内容だったが、コメントからは実際のコロナの影響はどうなのかが消化できなかったので、路上生活者の数値的な動向などのデータ的な解説があれば、説得力が生まれたのではないかと思う。また、路上生活者の支援活動においては制約も生じているのではないか。その影響や活動の工夫などが紹介されれば、通常とコロナ下の活動の違いもクリアになったのではないか。テーマと紹介された内容との関連がやや希薄に感じられた。