番組向上への取り組み

番組審議会だより
第574回(2021年2月17日)

【はじめに】
2021年1月13日、首都圏1都3県に続いて福岡県を含む7府県に新型コロナウイルス感染拡大防止の緊急事態宣言が発出、3月7日まで延長された。それに伴い会議出席者の感染リスクおよび3密(密閉・密集・密接)を避けるため、1月度と同様、委員・社側からの書面提出による審議とした。各委員からの書面は会議開催予定日の2月17日までに事務局に提出され、番組制作者が閲覧・回答。事務局が質疑の形式にまとめた。

審議対象番組
「九州やりすぎ大賞2021」(制作スポーツ局)
審議対象日
2月13日(土)
放送時間
14:30~15:55(85分)

議事の概要

番組内容

言わずと知れたグルメ王国・九州。実は、絶品グルメ以上に超個性的なのが店主たちのキャラクター。「働き方改革」、生産性向上、コストカット・・・。効率ばかりが重視される世の中で、「すべてはお客様のため」と損得度外視で仕事に打ち込む、愛すべき店主たち。それぞれの型破りで「やりすぎ」なおもてなし精神を通して、人情・愛情の大切さに気付かされる番組です。九州一の「やりすぎさん」の称号は誰の手に?

【出演者】
*スタジオ: 吉村崇(平成ノブシコブシ) 夏菜 *ナレーター:山下透羽
*VTR: 《九州各県代表》坂口純一(佐賀)/福元史郎(鹿児島)/戸高秀世(大分)/木村益男(長崎)/尾方登(福岡)/矢野龍生(熊本)/立山真一(宮崎)

委員のご意見

  • 紹介されるお店があまりに強烈すぎて、紹介されたお店に「行ってみよう」という気にはならなかった。「やりすぎ」で、かつ「行ってみたくなる」ようなお店を紹介することはできないだろうか。
  • 「大賞」が突然、番組の最後に決まったが唐突な感じがした。真剣に選ぶ必要はないと思うが、何らかの工夫があってもいいのではないか。
  • ただ「びっくりした」「おもしろかった」というだけではない、さらにこの厳しい時代にどうやったら儲かるか、売上をいかに伸ばすかという企業紹介番組ではなく、このような楽しい、温かい気持ちが残る番組はあまり見たことがない。それくらい各県出演者の方々も素晴らしかったが、局の方々がただ「おもしろい人たちを紹介しよう」ではなく「温かい、ほっこりした気持ちが伝わるように」という思いで作られているのがしっかり伝わってきた。
  • 番組の冒頭、番組概要説明や出演者紹介などのイントロダクションが特になく、鳥栖のお店の映像から入っていたが、これにより番組のテンポが上がり一気に引き込まれた。90分程度の番組であれば、何らかのイントロを冒頭に配するケースが多いように思うが、本件番組のように特段説明もなく本題に入るのも面白いと感じた。
  • 番組のタイトルが「やりすぎ大賞」となっているが、自分の仕事をとことん極めようとするがゆえに「やりすぎ」と見えるのだろうと感じたし、仕事の本質を教えられたような思いがした。しかも、特に説教臭くもなく、感動のお仕着せもなく、みなさんの仕事ぶりを淡々と紹介することに徹した点は、非常に効果的だったと思う。
  • 大賞は、ちゃんぽんを船で配達する長崎の木村さんであった。結論に異論がある訳ではないが、少し強引な選び方のように感じた。視聴者がテレビやスマホで投票する仕組みでもよかったのではないか。
  • 福岡のワンオペ食堂は、コロナ禍で料理の取り分け器具を使いまわすことを避けるべきとされているので、このタイミングでこのお店を紹介することが適切だったのかという気がした。雑然とした厨房と、尾方さんがペーパータオルで無造作に汗を拭くシーンを見ると、コロナ禍でなくても衛生面に不安を感じる視聴者がいそうな気がした。尾方さんがマッチングアプリを楽しんでいることについて、MCの吉村さんが「興ざめした」というコメントをしていた点も気になった。趣味は多種多様で構わない。
  • 男女比という観点でみると、女性が登場するシーンが少ないと感じた。男性オーナーが多いので仕方ないのかもしれないが、男女比にできるだけ差が生じない番組を制作できるよう、日頃から女性に関する情報をストックしていただけると嬉しい。
  • 鹿児島県のラーメン屋紹介で、カメラが厨房に入って移動しながら撮影をしていたが、画面が常に動いていたため、映像が見づらかった。
  • MC二人の言葉遣いが気になった。例えば、「ヤバイ」を連発することや、「スゲー」「コワッ」「頭おかしい」「マジで」「意味わからない」など、終始その調子で話していたのは、出演した店主の方々に対して失礼ではないか。
  • 何といっても、あえて九州とは無縁のMC二人を選んだのがよかった。「東京目線から見れば奇妙な地方」として九州をステレオタイプ化しすぎ、という批判もあるかもしれないが、こてこてのステレオタイプをさらに「やりすぎ」の極限にまで突きつめたからこそ、吉村さんならではの冷静な突っ込みがいっそう冴えわたっていた。それに、結局は吉村さんは北海道、夏菜さんは埼玉の出身ということで、あらかじめ「東京の上から目線」的なスタンスは排除されていたことも、安心して辛口のコメントを聞いていられる理由だったのかもしれない。
  • 単に「“やりすぎ”を究めた変わり者」、として終わらせないのがこの番組の優れたところで、各県代表のそれぞれが、仕事に対する向きあい方と言うのか、ちょっと大げさだが「生きざま」とでも言うのか、そういったものを混じりっ気なしに醸し出しておられるので、知らないうちにこの番組を通じて人生の勉強をしていた方も多いのではないか。
  • 台車を引いて食材の買い出しに赴くマスターの姿に見入っていると、当のマスターが婚活のマッチングアプリに夢中ということで最後はずっこけさせられたが、それもそのはず、この番組の主旨は何といっても、「昨今の暗いムードを振り払って元気になること」。こうした初志が細部に至るまで貫徹されていて、とても好感が持てた。
  • 昨今のコロナ禍で、どのお店も影響を受けているはずだ。客足や売り上げは減少したのか、それでもサービスを続けるのはどんな思いからなのか、といった点も聞いてみたかった。
  • 「九州、おかしいんじゃないの?」といった女性タレントの発言は、九州の視聴者にどう受け取られただろうか。例えば、各県出身のタレントを集め、出身県以外の県に投票する、という方式にすれば、より九州に理解のあるコメントが引き出せたかもしれない。
  • 各県内ではある程度、知られた存在なのかもしれないが、私にとっては他番組では見たことのない初めて知る人ばかりで新鮮味があり、そして何より、衝撃というレベルの人情味あふれる方々をよくぞ揃えられた、と感嘆した。また、各々の方々が「お客さまの喜びのために」という、やりすぎてしまうご自身の思いを方言でにじみ出るように話す構成も、とても効果的であった。
  • 常連さんが多い店で取材の際に初めてのお客さんに出くわすことや、福岡のお店では大々的にメニューが壁に貼ってある中で、初めて値段を知ったような光景に、少し違和感を覚えた。こうした「特徴的に驚く」お客さんに出くわすまで、取材をするなど工夫をしているのか。