番組向上への取り組み
番組審議会だより
第571回(2020年10月21日)
- 審議対象番組
- 「目撃者f 暴れ水と生きていく ~全員参加の流域治水へ~」(報道部)
- 審議対象日
- 2020年9月27日(日)
- 放送時間
- 26時20分~26時50分
議事の概要
番組内容
全国各地で豪雨や台風の被害が相次いでいる近年。「令和2年7月豪雨」では、大牟田市や久留米市など、九州各地も大きな被害に遭った。その被害状況や被災者の実態を伝える一方、「暴れ川」と呼ばれた神奈川県鶴見川の先進的な治水対策を紹介。国や自治体・住民など、流域全体で治水に取り組むことの重要性を問いかけるドキュメント。
委員のご意見
- 30分という短い番組の中で、自然災害との闘いや治水という重たいテーマについてまとまるだろうかと思って見始めたが、非常にコンパクトに論理立てて構成されていて、示唆に富んだ内容であると感じた。
- 「流域治水」「総合治水」「内水氾濫」といった聞き慣れない言葉を、そのフェーズフェーズで専門家の方が分かりやすくかみ砕いてお話しいただけたので、それぞれの考え方や意義、課題の理解が深まった。
- 鶴見川の源流から下流に至る体系的な取組という事例紹介が非常に丁寧になされていた分、筑後川の現状がどうなっているのかが気になった。久留米市と久留米大学のグラウンドを活用した調整池開発の話があったものの、市と県の関係とか複合的な県をまたいでの総合治水という取組について、もう少しあったほうが理解は深まったのではないか。久留米だけではなく上流域の複数の県にまたがる広域的な筑後川の治水の紹介もあったほうがよかった。
- うきは市の小学校で流域の教育が始まったということで、非常に興味深く拝見した。流域治水、総合治水という考え方が早い段階で学習されるのは本当にすばらしい。小さいときから自分が住んでいる地域のことや、当たり前に思っている水や気候を実際に先生が地域に連れて回って授業をされたというのはいい例である。しかし、番組で紹介された内容はカリキュラムのほんの入り口部分だったので、ちょっと物足りなさがあった。
- こうした社会的テーマを取り上げるのは本当に意義があることだが、この番組の放送時間が深夜2時20分から2時50分で、なかなかリアルタイムでは見られないというのがもったいない。流域治水問題は、地域の広範な人たちが理解を深めることが非常に大事であり、メディアの果たす役割は非常に大きい。この番組をもう少しコンパクトにしたダイジェスト版を、「めんたいワイド」など広く視聴されるところで紹介いただいて、もう少し広い範囲の方々にお伝えできるような取組をしていただけるとありがたい。
- 温暖化などを背景に、毎年のように水害に見舞われ、従来の対策では被害を抑えられない。そういう中で流域治水をテーマにされたのは非常にタイムリーで、時宜にかなった適切な選択だったのではないか。近年の水害で排水ポンプの機能が追いつかなくなってきて、ハード対策が限界に来ているというところも、ポイントをちゃんと押さえられていた。
- 内水氾濫の仕組みを、イメージ図や映像をうまく使って示せていた。紙のメディアだと、どう分かりやすく書くかが難しいけれども、テレビの映像は非常に立体的で、映像が動くので非常に分かりやすく示せていた。筑後川の流域マップに降水量の棒グラフを組み合わせて大雨の状況を可視化したり、国土交通省のハザードマップを使って危険なエリアを図示したりと、CGを上手に活用している。筑後川流域の災害リスクが分かりやすく説明されていて非常によかった。
- 保水の森という考え方や地元の子供たちがその森の手入れをやっていること、身近にあるテニスコートが保水機能を持っていることについて、なるほどと思わせるとともに、やはり市民の理解、協力が不可欠ということも訴えていて、いい事例だったのではないか。
- 流域治水はある意味で洪水が起きることを前提として考えるものである。水を上流や中流の田畑のほうに流し、そこが受け止めることで下流の大規模氾濫を防ぐという構図があるが、当然流域治水では、自らの田畑とか農作物を犠牲にしなければならない農家の方が必ず出てくる。そうした負担をどうやって分かち合っていくのかというのは結構難しい問題。サブタイトルにある「~全員参加の流域治水へ~」は非常にいいメッセージだけれども、現実はそういうきれいごとで済まない部分がかなりあるのではないか。
- 今回の番組は30分ということで、流域治水の入門編という形で捉えていけばいいと思う。全体を通じてもし時間があれば、流域治水の持ついろんな問題点や課題をまた掘り下げていくということも必要。
- 流域治水への方針転換を国交省も出しており、今後は流域治水の実現を目指しながらも、例えば事前放流をうまく使いながらもともとあったダムを適切に活用していくとか、災害時の避難のタイムラインみたいなものを住民が作り、浸透させていってソフト対策を充実させていくとか、複合的な対策を進めていくことが被害を最小化していく上で必要なのではないか。そういった流域治水も含めた総合的な視点を持っていただきたい。
- 番組中盤で、キュウリやパクチー農家の方の被害に関する話が挿入されていたが、繰り返される川の氾濫に対してのやり場のない切実な無念さが伝わってきた。鶴見川流域の成功事例と相まって、「では、筑後川流域ではどうなのか」という視聴者への訴求効果が高まったと思う。
- 筑後川流域の流域治水部分について、久留米の農家の皆さんが利水と治水のはざまで葛藤しながらも、治水のために協力し合う姿にはとても説得的なものがあった。もちろん30分番組という制約下では不可能だろうが、農家の皆さん同士の議論の様子や、皆さんと地域との関係など、もっと細かな取組を知りたい。流域治水というテーマ自体、私たちの生活観や社会観、それに自然観を根本から変えるような、大きなパラダイム転換に結びつくものだと思う。ぜひ、今後とも引き続きこのテーマを掘り下げて、番組を通して折々に御紹介いただきたい。
- 「地主同士の調整が難しい」とさらっと言われていたが、農家の人たちが受け入れるかどうか、ここがやっぱり流域治水のキーポイントだと思う。地権者の調整がどうなるのかとか、具体的にどういう利害関係が発生して、利害調整にどれぐらい時間がかかるのかが気になった。
- 「流域文化」という言葉が出てきたが、筑後川は流域文化では全国的に見ても先進的な地域ではないかと思っている。「筑後川流域連携倶楽部」というNPO法人をはじめ、筑後川は連携の取組が結構ある。そういうほかの事例もいろいろ紹介していただければよかった。