番組向上への取り組み

番組審議会だより
第570回(2020年9月16日)

審議対象番組
「24時間テレビ43 愛は地球を救う」
①in 福岡
②チャリティー報告(制作スポーツ局)
審議対象日
①2020年8月23日(日) ②2020年8月23日(日)
放送時間
①11時24分~12時24分 ②16時59~17時23分

議事の概要

番組内容

2020年の「24時間テレビ」のテーマは「動く」。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、「密」を避けることを基本としました。「賑わい」が生まれる対面募金活動やイベントを中止し、インターネットでのキャッシュレス募金を実施、制作番組ではソーシャルディスタンスの確保など、従来とは異なる視点・手法で放送。福岡ローカルでは縦軸企画に本社ロビーのチョークアートライブペイント、かすやドーム中継では地元で活躍する達人たちがさまざまなパフォーマンスを披露。VTR企画では「筑後弁を話す犬」・「発見らくちゃく!」で大きな反響があった、あきらめずに希望を持ち続け、ついに願いを叶えた難病女性を紹介。笑いや驚き・感動などを届ける、「ステイホーム」で楽しめるバラエティです。
《出演》
*MC:松井礼明 遠野愛 /スタジオゲスト:中澤裕子 原口あきまさ
*中継(かすやドーム): 斉藤優 伊藤舞 元木寛人 /ゲスト:サンシャイン池崎
*中継(本社): マサル 小林茉里奈
*福岡で活躍するパフォーマー(中国雑技・フラッシュ暗算・バーテンダー・ピアノ演奏)

委員のご意見

  • コロナということで番組作りに苦労されたのではないか。いろいろなパフォーマンスをされる方の出演はまとまりがない感じがしたが、VTRの筑後弁を話す犬など、わざとらしくない笑いを持ってこられたのは工夫されていた。
  • 難病の女性が、自身の励みとなったミュージシャンに会うために大阪に行く途中で断念はしたが、最後に素直な思いを書いた手紙を読んでいる後ろからミュージシャンが現れて・・・と、視聴者にはある程度予想ができていたとはいえ、大変なサプライズだったと思う。宮口さんの本当に自然な笑顔を見ながら、人間は苦労や苦しみを抱えていて、一人ではなく、救いや手助けがあるから生きられる、みんな助け合って生きていると思った。
  • コロナの中で、あえて「動く」をテーマにしたチャレンジ企画であり、移動自粛が要請される中、この主題の下でどんな切り口を見せてくれるのか楽しみに拝見した。全体として人々の動きや絆が効果的に取り入れられて、見る人を飽きさせなかった。生中継のコンテンツと録画のコンテンツがうまくミックスされていて、やや「てんこ盛り」という感じはあったものの、非常に面白く仕上がっていた。
  • 難病の宮口さんのエピソードでは、彼女の言葉一つ一つが心に染みた。宮口さんとスタッフとのやり取りから、心のつながりが少しずつ強くなっていくのがテレビ越しに伝わってきてぐっときた。番組制作に関わった全てのスタッフの思いが感じられた。制作担当者と宮口さんの間で信頼関係がきちんと築かれていることを非常に感じた。最初にスタッフから「実現が難しそうな企画をやってみよう」と提案したことが番組全体を作る上で大きかったのではないか。
  • パフォーマンスの「フラッシュ暗算」では、タレントと出演者とで数字が点滅する速度を変えていたのが気になった。視聴者の無用の疑問や混乱を避ける意味でも、演出はより慎重さを期していただきたい。
  • ISSOPさんの犬の動画はとても面白くて笑えた。どこにでもある風景を切り取って、それをあんなふうに感じ、人に見せることができるという感性がすごい。難病を患い、自身でドクターを探し回って治療をしてもらったというのが、お笑いと苦難の中で、非常にプラス思考で考えていく、自分で道を開くということが端的に表されている生き様で、非常にメッセージ性のあるコーナーだった。「笑いの感染を広げたい」ということが非常に視聴者の心に残ったのではないか。
  • チョークで描いた住職さんの絵がとても素敵だった。時々画面の隅に出してもらって進行状況を見たい、という思いも少しあったけれども、途中の工程を省いて完成した絵を見たほうが感動するのかもしれない。
  • 難病で体を自分で動かせない宮口さんのところでは、「動く」というのは自分の力のことだけではなく、周りを巻き込んで「社会を動かす」といった体の動きだけではないのだというメッセージを発していた。とても共感できる内容で、よかった。感動した。
  • 独学でピアノを弾けるようになった漁師さんは、太い10本指で美しい旋律を奏でていて、見かけだけで判断することはできない、人間とは奥深い存在なんだと思った。本人がとてもユニークで、奥さんがピアノの先生という環境が影響したのかとも思うが、一方で奥さんが何も教えていないというところが面白くていい味を出していた。指の太さと繊細な音楽の組合せという意外性が強烈な印象を与えた。
  • アナウンサーやレポーターはよく役割を果たされていたと思うが、芸人のサンシャイン池崎さんは無駄に動いているようなイメージがある。そういう役回りだから仕方がないのかもしれないが、動きだけというような印象が残ってしまった。
  • 舞台やストリートでの活動を封じられているパフォーマーにスポットを当て、その技を披露するステージを用意するという趣旨の企画は、「動く」という全体テーマに合致していてよかった。パフォーマーの方にとっても刺激になったと思うし、視聴者からも彼らを応援しようとか、また観てみたいとか、インパクトが大きかったのではないか。ただ、プロフェッショナルなパフォーマーの出演が少なかったのが残念ではある。せっかくなので、その道で食べている方にもっと活躍の場を提供してもよかったのではないかという印象を持った。
  • パフォーマーの芸を見て大変はらはらしたが、もし番組収録中に事故が生じた場合、その補償はどういうふうにされているのかということが気になった。
  • ISSOPさんについては、YouTube等で配信された動画がきっかけで企画が生まれたと理解している。近年、インターネット上のネタに依存し過ぎているような番組も見受けられるが、テレビ局のほうに葛藤はないのか。異なるメディアとの関係性をどのように考えておられるのか。
  • 難病の宮口さんが移動中の車内で体調が悪化していく姿をひたすらカメラで映し続けるというシーンがあった。あのような形で、まるで芸人さんのパフォーマンスを見せるかのように視聴者をはらはらさせるというのは、宮口さんへの、また、一生懸命芸を披露してくれる芸人の皆さんへの冒涜ではないかという気持ちになった。
  • 近年、障害を抱えた方や難病の方から「勇気や感動をもらう」と称して、言わば見世物にするのは人道的ではないのではないか、という問題が提起され、「感動ポルノ」という言葉が聞かれる。「24時間テレビ」における障害者応援企画に対しても、かねて同じような批判が続けられていると仄聞しているが、番組制作者の皆さんはどのようにお考えなのか。また、どういう議論が行われていたかということをお尋ねしたい。
  • 出演者は皆さん共通して「笑いを忘れず」というか、どこかほっこりさせられる方が多かったという印象だった。それは制作担当者が言っていた、「見て笑顔になってもらう」というコンセプトがあってのことだと理解できた。
  • 宮口さんの番組への評価は、他の委員の話も聞いていろいろあるのかなと思った。障害や難病を抱えた方はそれだけで一つのドラマを持ってしまっている。新聞社でも、そういう方を取り上げるときは、取材にも細心の注意を払わなければならないし、書き方も通り一遍だと作った感じになってしまうところがあるので非常に難しい。しかし、宮口さんの企画は素直に作っている感じがしたので、比較的共感できたという印象を持っている。
  • 宮口さんが読んだ手紙の中で、スタッフが「番組を作る」というミッションよりも、「宮口さんの人生を応援する」という気持ちでこの番組を制作されたのだなと感じられて、非常に感動した。約20分間だったけれども、それ以上に感じられるほど中身の濃いものだった。「発見らくちゃく!」の目的が「視聴者の願いをかなえる」ということだから、宮口さんの願いがかなって本当によかった。彼女にとって、この番組への出演がこれからの人生の励みになればいいと、心から思っている。