番組向上への取り組み

番組審議会だより
第569回(2020年7月15日)

審議対象番組
「目撃者f シリーズ福岡コロナショック」(報道部)
①翻弄された半年の記録
②第2波~北九州からの警鐘~
審議対象日
①2020年6月14日(日) ②2020年6月28日(日)
放送時間
①25時25分~26時20分 ②25時25分~25時55分

議事の概要

世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。2020年4月7日、安倍総理大臣は福岡県を含む7都道府県に感染拡大防止の緊急事態宣言を発出。不要不急の外出自粛の下、福岡の人々はどう対応したか。医療・経済・文化などさまざまな現場をシリーズで取り上げるドキュメントです。

委員のご意見

  • 教育や医療・保育・経済・雇用、いろいろな論点を網羅していたのではないか。
  • かなり逼迫していた保健所にカメラが入ったことは大きかったと思うし、不足している長袖エプロンをビニール袋で手作りしているという場面もあり、厳しい状況に置かれながらも何とかしようという医療現場の姿も伝わった。
  • 半年間で一番大きい危機は、医療崩壊になるかどうかというところだったと思う。そこに至る瀬戸際の現場、保健所・病院、それから医療関係者の子供を預かる保育園をカメラで捉えていたというところは非常に意味があったのではないか。
  • ②は、音楽やナレーションなど、全体の印象がちょっと緊迫し過ぎているというか、不安を煽るのではないかという危惧をやや覚えた。
  • 実名で報じた学校や、発熱で途中下校したお子さんは顔が出ていたと思うが、そういった報道があったことで何か影響があったか。行政が公表したからそのまま報道というのではなく、実名や顔を出すということに対して、番組制作の中でどのような議論があったのか。また、報じる側は、差別につながってはいけないというメッセージを伝える必要がある。
  • タイトルが出る前の短い時間の中で、テンポよく今回の件を振り返って、この番組で検証されるべき出来事をあらかじめ提示しておくのはとても優れた構成だったと思う。冒頭部分で畳みかけるように登場するいろいろなキーワードを並べるだけで、この半年間の日本社会の動きを語ることができてしまうのは、それ自体とても驚くべきことだ。
  • 福岡県内の各地にポイントを定めて、コロナ禍が地域や人々にどんな影響を及ぼしたか、言わば定点観測し、一部始終を記録としてまとめる、この時期にそれをやるというのはとても大きな意味を持っていると思った。
  • 我慢というのは日本国民の美徳かもしれないし、これがコロナの爆発的蔓延を防いだような言説もあるようだが、一方で、解雇した会社や政府、過度な自粛を強要する世間に対して、もっとストレートに怒りをぶつけていいのではないかと、とても複雑な気持ちになった。本当に困った人たちの物分りのいい態度みたいなものをすくい上げて、思いやりをもってまとめていくのも一つの方針かもしれないが、逆にやり場のない生の怒りみたいなものをカメラを通して世の中にぶつけることも必要なのではないか。
  • ①が1時間弱、②が30分というのは、時間配分がいささかバランスが悪かったように思う。②の北九州編の内容をもう少し膨らますことはできなかっただろうか。
  • あけぼの愛育保育園では医療従事者が働けるように子供を預かっている様子が紹介されていた。医療従事者やその家族にも感染リスクがあることや、子供を預かる先生方も感染リスクがあることなど、それぞれの苦悩や相手をいたわる気持ちが伝わってきた。
  • 感染拡大に伴って、人々の日常が一変していく様子もよく描かれていたと思う。いろいろな場所でのいろいろな方々の対応が満遍なく紹介されていて、この期間によくこれだけ取材されたと思い感心した。
  • 福岡記念病院や救急車の画像が印象に残っている。感染者またはその可能性が高い人に対して極めて密着したような状態で医療行為等を行わなければならないという状況を、改めて画像として目の当たりにすることで、ほんとうに医療従事者の方は大変だと感じた。具体的な感謝の形を社会で検討しなければならないのではないか。
  • 保健師は大変だなと感じると同時に、日本の行政システムの問題点を非常に露わにしたのではないかと思う。日本がやっておかなければならなかったことをきちんとしておかなかったツケが、コロナで露わになったのではないか。
  • 今回は多数派の人たちの社会生活であるが、DVや児童虐待の被害者、外国人就労者はもっと深刻な状況に置かれているかもしれない。もし可能であればそういう方たちも取材して、掘り下げていただくとよい。目に見えないところの変化・テレワークやキャンセル料の問題・進んだキャッシュレス決済・大学の授業や部活動の継続の大変な課題など、いつかまた取材していただきたい。
  • コロナに向き合う社会のいろいろな人々に焦点を当てて、現場の声を徹底的にすくい上げようとするスタンスが非常にはっきりしていた。全体としては、一人一人のいろいろな現場での苦闘をしっかり伝えており、非常にすばらしい番組だった。どれだけ広い範囲に深刻な影響を及ぼしたのか、切実さを伴って迫ってくるものがあった。
  • 「news every.」のアナウンスで締められて少し怖い余韻が残ったという意見もあるが、視聴者にまだ油断できないと注意喚起させる効果と、東京のニュースを持ってきたことで、この事象は全国どこでも起こり得る、と強調したかったという狙いを感じた。
  • イベント運営会社を解雇になった女性のインタビューに加えて、解雇した経営サイドの事情も取り上げていて、それぞれの事情、それぞれの考え方を伝えることで、一方的な報じ方になるのを避けたところは非常によかった。
  • 感染症センターの先生がリスクとベネフィットについて話していたが、多少の感染拡大のリスクは許容し、社会を動かしていく利益のほうがいいというふうにも聞こえた。今の社会情勢ではこういう考え方は必ずしもコンセンサスが取れているとは思えないので、やや思い切った見解を提示されたという感想を持った。
  • あけぼの愛育保育園で、「それぞれの立場でできることを」という言葉が出ていた。不安が強い状況の中でも、結局は一人一人が自分たちができることをやっていくしかないんだというメッセージをさりげなく伝えていたところが、非常に印象に残っている。
  • 検査をすることで感染が判明する数が多くなると医療現場がどうなるのか、なぜ検査が必要なのか、ニュースを見ていてもよく分からなかったが、無症状の人たちが感染を広げないためにも検査をすることがきちんと言われていたので、自分の中の疑問が少し解けた。
  • このような番組や報道は、放送局としての考えを出しにくいところがあるのかもしれないが、疑問を投げかけるとか、主張みたいなものを出してもよかったのではないか。
  • 点を線でつなぎ、客観的に冷静に振り返っていくことができた。また、身近な福岡の出来事がクローズアップされ、自分自身が当事者として何があったというような話を感じるという意味でよかった。客観性の上に、人々が苦悩を乗り越えるという温かいものが乗せられていて、非常に説得力があり感心した。
  • ①の一斉休校の取扱いは②に持っていったほうがよかったのではないか。休校の時期については相当いろいろ議論があるが、一人の専門家の見解だけで終わっていた。②では、リスクと経済の共存のようなコメントが専門家の立場でしっかり入っていたので、そのように検証したほうが説得力があったのではないか。
  • タイトルに「第2波」という言葉が使われていたが、今、関東の動きを見ても第2波という言い方をあまりしておらず、このタイトルがよかったのだろうかという疑問を持った。
  • 経済についてはトピックス的な感じがして、一つ一つ非常に興味深いが、それだけでいいのだろうかという感じがした。もっと大きな影響が出たところを取り上げてもよかったのではないか。
  • 新しい生活様式で乗り越えようと、前向きな取組を報道してもらいたい。コロナの影響は広範で、大変な面もあるがいい面もあり、コロナを機に社会を変えていこうという動きあるので、そういった取上げ方もあるのではないか。