番組向上への取り組み
番組審議会だより
第566回(2020年4月15日)
- 審議対象番組
- 福岡放送開局50周年記念スペシャルドラマ「天国からのラブソング」 (FBS制作スポーツ局制作)
- 審議対象日
- 3月15日(日)
- 放送時間
- 15時00分~16時55分(FBS放送エリア/福岡・佐賀)
*BS日テレ: 3月20日(金)19時00分~20時54分(全国放送)
議事の概要
番組内容
自分の死後、ひとり残される妻に宛てた未来のラブレターを家じゅうに隠した祖父。企みにこめた祖父の想いを知った高校1年の孫・天星。テレビ番組の助けを借り、形見のギターを携えた天星は音楽好きだった祖父とのセッションを実現。亡き夫と孫のステージに、ついに祖母が涙する。
依頼者の願いを叶えるFBSの深夜番組「ナンデモ特命係 発見らくちゃく!」が発掘した実話をもとに、家族愛を描く感動のドラマです。
*(出演)濱田龍臣 イッセー尾形 市毛良枝 吉岡秀隆 西尾まり 田山涼成 矢本悠馬 ほか
*(脚本)金沢知樹 いとう菜のは *(監督)藤谷拓稔 *(エグゼクティブプロデューサー)鎌倉由和
*(プロデューサー)松尾嘉典/渡邉浩仁 星野恵(日テレAX-ON)
委員のご意見
- 奇想天外な行動をするおじいちゃん、葬式で泣かなかったおばあちゃん、その謎を探る孫が中心になってどういうふうにドラマが展開していくのか、最初は見当もつきませんでしたが、見終わった後は、家族の深い愛がしみじみと伝わる、温かみのあるドラマに仕上がっていた。
- クライマックスシーンの後、ご本人の姿や「発見らくちゃく!」の様子、光井天星作詞・作曲の「バッハイ~お好きにどうぞ」がさりげなく流れていたが、最後の締めくくりとして好感がもてた。
- 後半、実際のTV局を巻き込んだ番組の中で「じいちゃんとのセッション」がどうなるのだろうと思っていたら、楽器を弾いているじいちゃんのVTRと孫のギターのセッション、さらにバックオーケストラ・コーラスまであって、中途半端ではないサプライズセッションの作りはとても驚いたし、良かった。
- 祖父の浩さんのキャラクターが非常に愛らしく魅力的。一見クールな康子さんとの対比が絶妙で、本当に素敵な夫婦だったのだろうな、と想像させられた。そして、そのクールな康子さんが秘めていた思いが、ラストシーンで溢れてしまうまでの流れはとても良かった。
- 単純に「祖父の隠された思いをその死後に家族が知る」という点に絞ってドラマを作っても番組は成立したと思うが、そこにひと捻りを入れ、「発見らくちゃく!」というテレビ番組の企画をテレビドラマ化するという「入れ子」構造に落とし込んだ設定とすることで、ストーリーの重層性が増し、視聴者の知的琴線を刺激する効果があったと感じた。
- 光井天星さんは、この「発見らくちゃく!」への出演をきっかけに、現在、シンガーソングライターとしての活動もしているようだが、この役者と交わるシーンが流れる中で、ひと言その説明が字幕でもよいのであれば良かった。
- 番組の演出だと思うが、高校の憎まれ役の同級生たちがなぜ金髪なのか、シャツをズボンから出しているのか、どう見てもひと昔前の不良の出で立ちなのに、クラスの女の子たちからは人気がある。時代設定に何となく違和感があった。
- 「発見らくちゃく!」との関係をよく知らずに見る視聴者もいるはずなので、そのような視聴者にとっては、番組との関係に関する情報がもう少し補われてもよかったのではないか、と感じた。
- 家族の心温まる物語であり、笑いと涙があり、そして最愛の人との死別という人生の転機について、考えさせられる物語でもあった。
- 主人公(天星)を通して、このドラマの少なからぬ部分は「学園もの」にならざるをえないが、学校での人間関係がどれもステロタイプで表情味がないため、見ていてつらかった。主人公を取り巻く社会的な人間関係がいささか薄味でのっぺりとした表現にとどまっているため、どうも彼に感情移入することが難しかった。
- 「おじいちゃん」のファンタスティックな振る舞いは、イッセーさんの演技を通してすべてリアルなものになっており、たとえば剽軽さの背後に隠れた寂しさや悲しみがふと顔をのぞかせるところなど、リアルでぞっとするような狂気さえ感じさせた。「感動の」ラストシーンよりも、イッセーさんのこうした演技のほうがこのドラマの(実話の再現としての、ではなく)本当の核心なのではないか、とさえ思えた。