番組向上への取り組み

番組審議会だより
第559回(2019年7月26日)

審議対象番組
「読売新聞スペシャル FBS開局50周年記念 君は君のままでいい ~立花高校 3年間の記録~」
(FBS制作)
審議対象日
7月21日(日)
放送時間
午後3時~3時55分

議事の概要

(イ)審議番組

番組内容

深刻ないじめを受けた生徒、障害を持つ生徒、なんとなく学校に通わなくなった生徒など様々な理由の不登校の生徒を受け入れ、寄り添い支援する取り組みを行っている立花高校。
日本財団の調査によれば、不登校の傾向がある中学生は全国に推定およそ33万人いるとされている。不登校の生徒が増えているのは、生徒個人の問題ではなく、ありのままの生徒を受け入れなくなった不寛容な社会が広がっているからではないのかと説く齋藤校長。番組では2016年から3年間、入学から卒業までの生徒たちのありのままの姿を追い続けた記録を通して問いかけます。

委員のご意見

  • 「君は君のままでいい」というタイトルは、内容をよく表現したいいタイトルだと思った。 校長先生を始めとする先生方の神のような対応、ありのままを受け入れる受容力、寛大さなどの姿が表れていて感心した。入学から卒業までの3年間という長期にわたる密着の記録が、この番組の価値を上げていると思った。
  • 教育現場に携わる者の一人として、自身の学生との接し方や声かけの内容などを振り返る機会になった。よい方向に生徒たちを導きたいとき、悪い行動を正そうとしてしまうが、よい行動にも目を向けて、まずはできていることを認める声かけが大切だと感じた。
  • 「ここでキープできている笑顔が何で社会に出るとキープできないのか」「この子たちが社会をおおらかに変える光になる」「できないことを嘆くのではなくて、できていることを認め合う」など、齋藤眞人校長先生の言葉が幾つも心に残った。また、最後に「よう来たね、みんな」という印象的な言葉で番組が締めくくられていたが、どれもとてもすてきな言葉で、視聴者の記憶に残るのではないかと思った。
  • 全校生徒500人のうち8割が不登校の経験者であるということに非常に驚いた。不登校になった原因にはあえて光を当てずに、むしろそういった生徒たちの日常、実際の学校生活を淡々とありのままに映し出すことで、より生徒一人一人の生き辛さが非常に生々しく迫ってくる感じがして、番組のアプローチの仕方としては非常によかった。
  • 3年の長期間に及ぶ取材に基づく番組で、質の高い力作に仕上がっていた。ディレクターに「私」という一人称で語りを担当させた点も、親近感を持たせる構成でよかった。一方で3年がかりの取材内容を50分番組にまとめるのは、取捨選択が非常に難しかったと思うが、視聴後は消化不良感も残った。
  • この番組は今の社会の問題点を描き出していると思った。今の社会は、多様性を重んじるなどと言っているが、社会になじめないいろいろな問題を抱えた人たちを許容できる社会ではないことを突きつけられ、つくづく考えさせられる番組だった。
  • 寛容さが失われていると言われている昨今、非常に考えさせられる内容で、不登校の実態や社会全体でそういう子供たちを支えていくことの重要性に改めて気付かされた。自己責任や生産性という言葉が強調され、人の生き方を優勝劣敗の視点で論じる風潮にも一石を投じるような内容だった。
  • 性同一性障害、身体障害、いじめ、家庭内虐待など、様々な事情で不登校になった学生たちの駆け込み寺のような立花高校のドキュメンタリー番組で、映像でもそれぞれの事情がわかるように紹介されていた。部分的に大変重いシーンもあったが、空や木や葉っぱなどの短いカット挿入がほっとさせるワンクッションになっており、総じてすばらしいドキュメンタリーになっていた。
  • この番組はジャーナリズムの真髄、報道のエッセンスみたいなものが詰まっていて、非常に質が高い番組という印象を受けた。
  • この番組の核になっているのは、生徒と先生の触れ合いや信頼関係であり、その中心人物である校長先生の人となりをもう少し紹介したほうがよかったと思う。また、立花高校に来ようと思った理由を校長先生本人に語らせていれば、番組内容に深みが出たと思う。
  • 話を展開しやすい生徒がたまたま3人の女子生徒だったのかもしれないが、中心となる生徒の男女バランスは考慮してほしいと感じた。
  • 番組の節目に詩のような文章が書かれたパネルが映されたが、これらの言葉は、伝えたいメッセージで番組のポイントだと思うが、設置の意図や誰が考えたものかなどの説明が必要だと思った。
  • 性同一性障害や虐待の被害者である生徒がモザイクなしで出てくれた理由について知りたいと思った。問題はなかったのか心配だ。
  • 非常にいい番組だったので、全国放送で、できるだけ多くの皆さん、全国の人に見てもらいたいと思うような質の高い番組だった。

(ロ)その他

7月に発覚した殺人事件のニュースで被害者の顔写真を取り違えたことについて、その経緯と対応を報告しました。